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ヨロピコ、二種類の寛容

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 土曜日。
 エレベータで一緒になったおっちゃんが、何の前触れもなく「お前はパキスタン人か? インド人か? イタリア人か? 韓国人か?」と話しかけてくる。
 中国以外の国籍を四つも畳み掛けられたのは初めてですが、その四つにおよそ一貫性がありません。少なくともイタリア人じゃないやろ、普通に見て。
 「に、日本だけど・・」と答えたら、「そうか、日本か! はっはっはーっ」と豪快に笑い、鼻歌を歌いながらエレベータを降りて行きました。

 日曜日。
 某日本関係施設の図書館で勉強していたところ、一人のエジプト人男性が、大変礼儀正しい日本語で話しかけてきました。
「すいません、質問してもよろしいでしょうか」
「え、あ、はい、どうぞ」
「『ヨロピコ』というのは、どういう意味ですか?」
「よ、ヨロピコ!? それはどういう文脈で・・・あ、アニメの中ですか?」
「はい、そうです」
 一応「『ヨロピコ』とは『よろしく』のことだが、ふざけた言い方であり、アニメの中では許されるが、使わない方が良い」と説明しておきました。男性は満足したようで、小声で「ヨロピコ、ヨロピコ・・」と呟きながら席へ帰っていきました。
 まぁ、アニメでも何でも、祖国について興味を持って貰えたら大変光栄なんですけれどね・・・。
 あなたたちの文学やら古典やら理解するために七転八倒し、大変お世話になっているのに、わたしが役に立てるのは『ヨロピコ』の意味を教えるくらいですか。日本って一体・・・。
 これからもヨロピコね、親愛なるエジプト市民。

 月曜日。
 「日本でガマール(ムバーラク大統領の次男)がガマル(ラクダ)と呼ばれている」という話をF女史にしたところ、大爆笑される。「ガマルと言われたらガマールも怒るよね」。
 出来すぎた話なので、新手のヌクタ(笑い話)として広まってくれたら面白いです。

 火曜日。
 約6時間一対一の授業を受け、5時間くらいは図書館で自習。
 時間がない。時間が欲しい。ああ、もっと勉強していたい。
 ヘロヘロになったところで小難しい古典など読んでも、一行読むのに四苦八苦なのですが(別にヘロヘロじゃなくても大変だけど)、そのわからなさと格闘しながら交わしている会話は、まったく無意識で、丁度この「ヒーヒーなんか言ってる」くらいが、正味の実力なんじゃないか、とふと考える。
 日本に戻って、家も全部引き払って、もう一度戻ってきてひたすら勉強したい、とかなり本気で考える。でも正直、勉強以外のことでは、すごく住みたいとは思わないですけれどね。

 水曜日。
 勉強は順調なものの、また道でかなりバッドな体験があり、もう道路に飛び出して死のうかと思ったけれど、たまたま柵があって面倒くさいからやめました。
 でも、直後にF女史が話に乗ってくれて、かなり救われる。
 傷つけるのも人間だし、救うのも人間。
 そんなのは世界中どこでも同じだけれど、この異様に人間臭濃い街では、どちらの強度も東京の比じゃないです。

 「都会は人間が冷たい」というのは、ある程度普遍的に当てはまる傾向でしょう。
 人が沢山密集すれば、接近しすぎないような機制が働く、というのが第一。そして、都会というのは、田舎者の集まりなわけであって、この「故郷を捨てた田舎者」は、都会においては共同体的な根を一度失っている。程度の差こそあれ、都会というのは、人間を一度根っこから引き抜いてしまうものであり、人に対して良くも悪くも距離ができる、というのはあるでしょう(だから「都会の貧乏は悲惨」)。

 で、カイロも東京も同じく大都会なわけですが、人の質は全然違います。カイロだってエジプトの田舎とは違うわけだけれど、密集しているのに尚ねっちゃりぬっとり絡みつくような人間関係が生きています。
 それは多分、エジプトの社会が、トッド風に言えば「内婚制共同体家族」をベースにしているからであって、要するに大家族主義なわけです。核家族的、もしくは直系家族的であれば、都会に出れば横のつながりはできにくいです。直系家族なら都会と田舎の直のパイプというのは残るかもしれないけれど、新たなネットワークというのはあまり広がりません。
 でも、大家族主義の場合、数世代のうちにまた「大きな家族」が再構築されることもあるし、それ以前に家族ごとドーンと移動してくるケースが多い。だから、都会と言っても、それほど「ねっとり感」が軽減せず、みんながそれに慣れているので、依然として凄まじい人懐っこさを発揮してくるわけです。
 それに救われることもあるし、傷つけられることもある。要するに普通の家族と一緒で、この街は一つの「家族」なのです。

 トッドで思い出しましたが、移民問題解決の唯一の方法は、「フランス式」、つまり粒状にしてバラバラにして混ぜて同化する、という方向だけだと言います。つまり「多分化主義」では解決しない。
 これにはまったく同意で、「多分化主義」のその単位となる「文化」をどう決めるのか、権力が「文化」を区切れるのか、という問題がまずあるし、無理に区切っても「文化」間の壁が厚くなるだけです。
 ガンガン外婚して、混ぜちゃうしかない。
 日本のような直系家族主義も、移民とうまくやるのはとても難しい。混ざらないから。

 で、エジプトのような共同体家族の場合、やってくる者には、確かにある意味「寛容」です。
 ですが、寛容の種類というのが違って、彼らの寛容とは、バラバラで距離を置いて粒状に混ざっているのではなく、共同体の中に取り込んでしまう懐の深さなのです。巨大な家族の中の一成員にすぎないから、多少変でも消化しちゃう寛容。これは、新しい家族が入ってきて、お隣に住むのとは違います。寛容だけれど、もう取り込まれているから、勝手なことは許されないし、放っておいてくれない。
 ビジネスの場も公共空間も全部「共同体的」「家族的」だから、ビジネスライクな「合理性」は到底望めない。その代わり、「秩序なき秩序」があらゆるところで介入し、結果的に「そこそこ」な安定には達します。

 で、こういう大家族システムが、核家族システムや直系家族システムと対峙した時どうなるかといえば、大家族は「家族的寛容」を持ってはいるのだけれど、本当に家族の外だと判断した時には、全然寛容ではなくなります。核家族は優しくないけれど、家族の外との「そこそこ」のお付き合いには慣れている。彼らはそれが彼らなりの「寛容」だと思っている。ここで二つの寛容がぶつかるわけです。
 この辺が、エジプト人(というよりムスリム)が、昨今のヨーロッパにおける「不寛容」に怒ったり、一部の欧米人がイスラームを「不寛容」だと考えてしまう根の一つのように思われます(イスラームとアラブをごっちゃにしちゃいけませんが、大家族主義はイスラームと親和性が高い)。

 思い出すのは、「長男のわがままと次男のわがまま」というお話です。
 みんなで食事に行くのに、一人だけ違うものを食べたい人がいたとします。
 長男は「じゃあ、俺は寿司食べに行くから、みんなは焼肉楽しんできてよ」と言う。次男は「なんで焼肉やねん! 寿司行こうよ!」と言う。
 どっちもわがままなのですが、わがままの種類が違う。
 大家族主義は、次男的にわがまま。核家族は長男的にわがまま。
 二種類の寛容と、二種類のわがまま。
 それで、「うちは寛容なのに、アンタなんて融通きかないんや!」という果てしない小競り合いが延々続くことになるわけです。

 この解法として「お互いのやり方を知り尊重する」というのが、教科書的にあがってくるでしょうが、それはあくまで「多分化主義」的視点であって、結局のところ同化はしません。別の国なら無理に同化しなくたってもちろんOKなのですが、少なくとも問題は解決はしていない。ただ、小競り合いを抑制したり、先送りしているだけです。
 先送りで上等だし、千年くらいこの調子で先送りしたら良いと思うのですが、もし本当に「混ぜちゃおう」としたら、その混ぜ方自体が異なっているので、容易にはいきません。チープなグローバリズムもコスモポリタリズムも、ぬかるみにハマってにっちもさっちもいかなくなるわけです。

 「多文化主義」は移民の解法としては有効ではないけれど、この場合、「真の解法」がかなり絶望的なので、先送りだけでしのいでいくしかないのかもしれません。ベストじゃないソリューションを声高に叫ぶのは気が重いのですが、逆に、ここで言う「真の解法」こそが幻想にすぎない、とも言えます。
 多分、真の解法なんてない。グローバリズムは嘘っぱち。
 昨今、世界各地でナショナリズムが盛り上がったり右傾化が進んでいるのには、一理あります。もちろん、手放しで賛成などしないけれど、極右よりもボンボンリベラルやグローバリゼーションの方が遥かに危険で、看過できません。
 だから敢えて、「その場しのぎ」の案を押し、千年くらい騙し騙しやっていこうよ、と言ってみます。ツケは回すためにある。回せ回せ。

 何でこんな話になったんでしたっけ?
 そうそう、しんどいことがあったのよね。
 それで、F女史とお喋りして忘れたわけだけれど、ここでこうやって話がズレていって、何の話かわからなくなるのも、「お喋り療法」と似ていますね。忘れた忘れた。
 忘れたことは忘れたから忘れておきます。

ルクソールの女の子
ルクソールの女の子 posted by (C)ほじょこ
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  1. ヨロピコ、二種類の寛容|2009/12/18(金) 06:16:52|
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