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日本人と宗教、タヒーナの思い出

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 F先生の授業で、「日本の文化について何か文章を書いてきて」と宿題を出され、真面目に用意してあったのですが、ノートを忘れて、結局口頭で全部話すことになりました。
 「文化って、ざっくりしすぎやろ」と思ったのですが、手始めにちょっと重いですが宗教ネタから入ってみることにしました。
 こんなお話です。
 ある作家が、「日本人の80%は仏教徒で、70%が神道の信者だ」と書き、それを読んだアメリカ人が「この作家は簡単な百分率も知らないのか」と驚いたそうです。
 F先生も「え?」と驚いて、面白いくらいツカミにかかってくれます。こういう時のエジプト人は、めちゃくちゃ素直に大袈裟なリアクションを返してくれるので、トーク冥利に尽きます。
 日本人なら、別に驚きはしないでしょう。同じ人間が、「ある時は仏教の寺院に行き、ある時は神社に行く」のは、日本ではよくあることですから。
 しかし、エジプト人でムスリマの彼女にとっては、やはり相当奇異なことのようで「一体どういうことなの??」と、非常に素直に疑問を持ってくれます。
 ここから先はわたし個人の考えですが、ほとんどの日本人には、دين(ディーン、信仰)というものはないし、日本における仏教や神道も、多くの場合は「ディーン」ではない、と思っています。
 もちろん、日本人に信仰の名に値するものがまったく存在しない、というわけではありません。でもその「信仰」は、少なくともアラビア語話者が「ディーン」と言って想定するような性質のものではないし、「日本人の主なディーンは何だ」と問われて、正直に答えようとするなら、ここから話し始めないといけないでしょう(でも面倒なので普通はそこまで話さないw)。
 「もちろん、一部の信仰熱心な人は違う。彼らはスーフィーのような存在で、仏教のスーフィーなら、髪を剃って寺院で暮らし、普通の仕事はせず、信仰が彼の職業であるかのように生活する。一方で、それ以外の日本人は、宗教は『スーフィー』のやることで、自分には関係ないと思っている。多くのムスリムとはまったく異なる」「日本人の大多数が寺院や神社に行くのは、キレイな建物を見たり慣習に倣ったりしているだけだ。時には、自分がいるのが仏教寺院なのか神社なのか認識していないことすらある」。
 「それは、一人のエジプト人が、時にガーマに行き、時に教会に行くようなもの?」と先生は笑っています。そんなことはもちろん、エジプトでは絶対にあり得ません。
 「そうだけれど、彼らの意識は違う。一部の信仰熱心な人以外にとって、寺院も神社も別に信仰の場ではない。年始には多くの日本人が神社に行くけれど、誰も理由など考えていない。単にみんなが行くから自分も行くだけだ」「仏教の寺院に行き、神社に行けば、神様がもっと沢山になって得だ、という考え方もある」と、面白おかしく語ったら、大爆笑してもらえて楽しかったです。

 ちなみに「仏教のスーフィー」というのは変な言い回しですが、以前にS先生が語っていた内容によると、「スーフィズムالتصوفというのはイスラームに限ったものではない、あらゆる信仰にスーフィズムがあり得る」とのことなので、言って言えないことはないのかもしれません(もちろん、ここでは説明の便宜上そう言っただけ)。

 これくらいまくし立てたところで、F先生がふと「あなたは本当に変わっているねぇ」と言います。
 「え、変?」と聞き返すと、「変な日本人」。
 「沢山の日本人学生に会ったけれど、皆ニコニコしているだけあまり喋らない。『わかった?』と聞いてもナアムとかアイワしか言わない。あなたはめちゃくちゃ喋るし、身振りもエジプト人みたいで、何でもハッキリ言う。全然違う」。
 「日本人は一般にあまり沢山喋らないし、日本でははっきりものを言うのは好まれない。特に否定的なことは、かなり遠まわしに言うのが普通だ。わたしのような人間は、『良くない日本人』だ」
 そう言うと、本当にストレートに「確かに『良くない日本人』だね。あははは」と返されてしまいました。
 超直情径行で口と手と足が常に脳みそに先行する性格が、人生で初めてプラスに働いているようです。エジプトに住みたい・・・。
 「人によるけれど、一般に日本人は『言わないでも通じる』ということを重んじる。言わないとわからない人は嫌われる。確かに、言葉抜きで理解できれば素晴らしいし、ずっと一緒に住んだりしていれば、そういうこともできるだろう。でも、特に違う環境で育った人と話す時は、まず何でも言葉にしないといけない、とわたし個人は考えている。『わたしは理解した』と言いたいなら、単に『はい』『わかった』とか言うだけでは不十分だ。『あなたの考えはこういうことだ』と説明できなければならないし、『この点にわたしは同意するが、ここは考えが違う、わたしの考えはこうだ』と言えて、初めて『理解した』ことになる。表現できなかった結果、悪いことが起こったら、それは表現できない人間が悪い。沢山表現すれば、時には争いになるが、むしろ争った方がいい。わたしは喧嘩のない世界は嫌いだ。そういう考え方の日本人は、ダメな日本人だけれど、わたしはわたしなので、別に気にしていない」
 そうまくし立てると、とりあえず「表現は義務」ということには同意して貰えました。他はダメだったかもしれません(笑)。
 もちろん、ヘボヘボのアラビア語で表現と言えるほどの表現ができているかどうかはかなり怪しいのですが、とにかく常に「何か喋って」はいるので、感情の迸りだけは伝わっているでしょう。

 気になったので、「他の国の人はどう? 中国人は?」と尋ねてみると、「一番喋らないのは日本人。次が韓国人かな。中国人は、結構喋るし自己主張する」とのことです。そういうことなら、これからはシーニーと呼ばれても歓迎することにします。いいよもう、中国人で。ニーハオ。毎日パンダ食べてるよ。
 わたし個人は、「ちょっとエジプト人で、ちょっと西洋人で、とにかく変わっている」そうです。全員キャラ立ちすぎのエジプト人に変人呼ばわりされて、大変光栄です。これからも毎日喧嘩して生きていきます。押忍。

 ちなみに、肝心の言語的なことについて「何が問題?」と尋ねると、「正しい文法で沢山喋るのは良いけれど、フスハーとアーンミーヤがいつもグチャグチャに混ざっている」と指摘されました。すいません。頑張ります。押忍。
 もうちょっと人の話を聞かないといけないですね。まくしたてた後に、F先生が静かに正しいアラビア語でまとめてくれると、あまりの美しいまとめ方に、ポケーッとしてきます。特にフスハーだと、惚れ惚れするくらいです(フスハーの綺麗な人は無条件に尊敬)。子供が大人を見上げているようですが、ボケッとしていないで、表現を盗まないといけません。あんな風にかっこよく喋りたい!

 確かに沢山喋ってはいるのですが、「言いたいこと」が言えているかというと、そこはおぼつきません。大抵は「言いたいこと」がまとまる前に喋っているので、深く考えていませんが、難しいことを言おうとすると、語彙が足りなかったりしてちゃんと表現できないので、そういう時は、多少意図と違っても、知ってる範囲で言葉をつなぐようにしています(この「苦し紛れでつい違うことを言ってしまう」のは、慣れない外国語を話している時に万国共通で見られる現象だそうです)。また、少ない言葉で抽象的にバシッと言おうとすると難しいので、ちょっと言葉に詰まりそうになったら、速攻でネタを地に落として、具体的な例を次々まくし立てることで誤魔化しています。
 例えば、「三交代制の工場で働いている友人」とかバシッと言いたいのに言えない時は、「工場で友達が働いている。その工場は、例えばムハンマドが九時から五時まで働いて、次にアフマドが来て働いて、アフマドが終わるとマフムードが来て働く。マフムードが帰る時に、ムハンマドが来る。三人の人間が違う時間に働く。一人の人間は、時々働く時間が変わる。その工場で、友達が働いている。その友達が・・」とか、めちゃくちゃ幼児レベルで話しています。
 こういうのは、トークの場をつなぐ上では有効なのですが、いつまで経ってもレベルの低い似たような会話しかできないので、もっと語彙を身に付け、ちょっと話につまっても高級な言い回しを使う努力をしないといけないかもしれません。

 今、ふと気づきましたが、この「とりあえず何か言っちゃう」性質は、エジプト人が間違った道を教えてしまう時と似ているかもしれませんね。「ここまで来て何も言わずに帰れるかっ」みたいな。わたしは間違った道でもとりあえず教えちゃうエジプト人と一緒です。あかんやん!

 今日は料理のレシピのような文章も読んだのですが、こういうのは結構難しいです。まず、その分野の語彙がキチンとないといけませんが、食材や調理法といったものは、知っていれば簡単だけれど知らないと永遠に意味不明、ということになります。スパイスの名前とか、さっぱりわかりません。先生も「難しい」と言っていました。
 そこでふと、初めてタヒーナ(ゴマのペースト)を食べた時のことを思い出して、先生に話しました。
 エジプト好きな人でタヒーナを知らない人はいないと思うのですが、わたしは当初エジプトそのものには別に興味もなく、遺跡も食べ物もまったく知識がありませんでした。
 マタアムで、サラダの欄のところに「タヒーナ」と書かれていたので、「サラダの仲間だろう」とは思ったのですが、何やらさっぱりわかりません。店員さんに「タヒーナって何?」と聞いたら、「タヒーナは・・・タヒーナだよ、タヒーナ。お前タヒーナ知らないのか!? タヒーナだよ!」と、ただひたすら「タヒーナ」という言葉を繰り返すだけで、何の解決にもなりません。
 食べればわかるだろうと思い、「よくわかんないけど、そのタヒーナくれ」と言ったら、ちゃんとタヒーナが出てきました。店員さんは「これがタヒーナだ」と、なぜか滅茶苦茶誇らしげです。
 でも、「サラダのところに書いてあったから、きっと野菜の一種だろう」と思っていたら、全然想定外の姿形をしていらっしゃいます。見た目からは原料の想像もつきません。
 普通、タヒーナというのはエーシ(パン)につけて食べるものなのですが、この時はタヒーナの存在も知らないくらいなので、食べ方すらわかりません。
 「スープみたいなもの?」とスプーンですくって食べるのですが、そういう食べ方をして美味しいものではありません。店員さんが横で大爆笑しています。
 食べ終わっても、まだタヒーナが何なのかわからず、単にエジプト人のウケがとれただけでした。
 でもこうして話のタネになったし、またエジプト人を笑わせることができたので、得な経験でした。

 能天気なことばかり書いたので、最後にちょっと真面目なことを書くと、やっぱり女一人でどこにでも歩いていくのは、褒められたことではないようです。彼女は最近、写真を撮ってもらうために夜に一人でお化粧して出かけたそうですが、男の人にジロジロ見られたそうです。
 夜といっても八時くらいですが、「夜、女が一人で化粧して歩いている」だけでも、奇異なことのようです。ちょっとションボリします。うち、強い子やから、悪いヤツが来ても自分でやっつけるっちゅうねん。
 というか、一体誰と歩けっちゅうねん・・・。

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アレキサンドリアのラマダーン飾り2 posted by (C)ほじょこ
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  1. 日本人と宗教、タヒーナの思い出|2009/10/16(金) 08:47:14|
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