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音楽はハラームか、信仰の空気、洗濯機到着

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 お休みの金曜日。例によってカフェで新聞読んだり勉強したりしよう、とダウンタウンに出動。

 出かけしなに、同じアパートの男性が英語で話しかけてきます。アラビア語で答えていたら、「いや、僕はエジプト人じゃない」と言います。パキスタンからの留学生だそうです。

 メトロの中で、盲目の少年がティッシュを売っています。
 子供や身体の不自由な人や家庭の事情が困難な人(窮状を訴える女性など)が、ティッシュや小物を売ったり、物乞いをしているのはよく見かけますが、目の見えない子供が一人でいるのは初めて見ました。しかも単なる物乞いではなく、形だけでもティッシュを売っています。
 乗客が次々少年の肘あたりを触って合図し、お金を手渡していきます。もちろん、ティッシュは受け取りません。隣の老婆も喜捨をして、わたしも小額ですが少年に手渡しました。
 それがきっかけになったのか、おばあちゃんが話しかけてくれました。「どこから来たの?」「大使館で働いてる人?」といった会話に入らないような会話ですが、女性が話しかけてくることは珍しいので、すごく嬉しかったです。新聞を読んでいたので、これも多少話しかけ易さにつながったかもしれません。
 エジプトのおばあちゃんには、喜びと悲しみが一本ずつ皺になったような、とても優しそうで美しい人がよくいます(そうじゃない人もいるw)。ああいう風に歳を取りたい、美しいおばあちゃんになりたい、と強く思います。
 そのためにも、「女のイスラーム」にもっと入っていかないといけないなぁ、と感じています。

 ダウンタウンで少しブラブラしていたら、CD屋さんがあったのでフラッと入ります。
 「ミシャーリー・アル=アファーシーのクルアーンはあるか」と尋ねたのですが、CDだけで、画像付きDVDはないとのこと。残念です。
 代わりにムハンマド・へニーディーの映画を探したら、こっちは当然沢山あります。若い店員が速攻ナンパモードで色々教えてくれます。
 「いくら?」と尋ねると「20ポンドだけど、電話番号を教えてくれたらタダであげるよ」とのお返事。手元に30ポンドくらいしかない貧乏暮らしで、ちょっとグラッと来たのですが(笑)、「いや、今手持ちがないからまた来るよ」と言ってお店を出ました。
 電話番号20ポンド(約400円)。毎回貰えるなら売ってもいいかなぁ(笑)。

 また街頭でのテレビ撮影に遭遇。

街頭でのテレビ撮影
街頭でのテレビ撮影 posted by (C)ほじょこ


 よく行くカフェで新聞を読んでいたら、いつものおじさんではなく、カフェのオーナーのZ氏が話しかけてくる。
 記念ノートみたいのがあって、日本人も何人か書き込んでいます。「オダギリという日本人が友達だ」とのことで、よくよく話を聞いてみたら、パレスチナの取材で知られるジャーナリストの小田切拓さんのことのようです。
 こういう顔の見える狭いところで人間関係がつながっていく感じは、非常に面白いです。わたしは京都での暮らしが長く、京都は結構カフェ文化が盛んなのですが、東京にはまったく分断された人間関係しかなく、いつも息苦しい思いをしていました。その点、カイロは天国です。人間、こうやってカフェで出会ってお話してナンボです。

 Z氏とは、ちょっとした流れからイスラームの話題になり、例によって止まるところのないトークが始まります。二時間くらいは延々イスラーム談義が続きました。ほとんど彼の独壇場ですが、時々わたしも乏しい教養を駆使して返すので、ここぞとばかりに一家言ぶちかます相手としては、格好なのでしょう。かなり体力を消耗しますが、修行だと思って集中して聞き取ります。
「お前は日本人なのに、なぜクルアーンを知っているんだ? どうやって学んだ?」
「最初は日本語のタフスィールを読んだが、その後アラビア語で読んだ(全部は読んでいません)。日本語のものは良くない(日本ムスリム協会の日亜対訳は良いです)」
「なぜだ?」
「クルアーンは常にアラビア語でしょう。わたしは日本人だし、難しいからタフスィールも読むけれど、補助にすぎない。
إنا أنزلناه قرآنا عربيا لعلكم تعقلون
『我はクルアーンをアラビア語で下した、汝らは悟るであろう』」
「その通りだ。クルアーンは、わたしたちエジプト人にとっても難しい。だからタフスィールを読んだり、先生に教えてもらう。でも、クルアーンそのものは常にアラビア語、フスハーだ」
 こういう話題になると、一般のエジプト人でも頻繁にフスハーとアーンミーヤを行き来して、言語的に非常に面白いです。一つの文の中にフスハー的表現とアーンミーヤ的表現が混ざることすらあります。

 話の中で、彼が音楽を「ハラームだ」と言います。
 歌や音楽をハラームと考えるムスリムがいることはわかっていたのですが、正面切って話題にするムスリムには初めて会いました(言わないだけでそう思っている人はかなり多いはず)。
「歌はハラームかな?」
「あんな肌を露わにした女が出てくるビデオクリップが、ハラームでないわけがない。品のない歌詞も沢山ある」
「確かにあれは良くないし、ハラームな歌もあると思うけれど、音楽そのものはハラームじゃないと思う」
「うーん・・でも少なくとも、ハラームなものへの入り口になる」
 彼が言うこともわかるのですが、個人的には、音楽そのものはやっぱりハラームではないし、イスラームとも矛盾しないと思っています。「入り口」でNGなどと言い始めたら、どんどん世界が狭苦しくなるだけでしょう。
 ただ確かに、アラブ世界のミュージッククリップには、ムスリムが多数派の国に相応しくないものもあるし、規制が入っても当然かな、という気はします。エジプトのポップ歌謡が素晴らしく楽しいだけに、バカな格好のビデオクリップを流して要らない反感を買うような真似はしないで欲しいです。

 通りがかったひょうきんそうな若者が、話の中に入ってきて、「アラビア語教えるから英語教えてよ」と言ってきます。前にも別の人に同じことを言われたことがあったのですが、「あたしゃ日本人だから英語なんか教えられないよ」と呆れてしまいます。
 でも、考えてみると、日本人でも「外人」と見ると英語を喋るものだと思っているし、フランス人に「英語教えて」とか言っちゃう日本人もいるかもしれません。
 ちなみに「日本語なら教えるよ」と言ったら、「難しいからヤダ」とのことでした(笑)。

 話は面白いのですが、勉強が進まないので、マグリブ過ぎてから移動。

 別のカフェでまたちょっと勉強。
 テレビで韓国とどこかのサッカーの試合をやっているらしく、隣の男性が「コリアか? 今サッカーやってるぞ」と聞いてきます。

 帰宅し、半日ぶりくらいにネットがつながったので、久々にいくつかサイトを覗いてみる。
 日本についてのネット情報を見ると、いつも暗澹たる気持ちになります。ネットで見ていると、冷たい人ばかりで、ロクでもない国に見えます。
 冷静に考えても、日本の方が絶対良い!というのは、医療の充実(医療内容というより保険医療制度)くらいしか見当たりません。
 もちろん、経済的には日本の方がずっと恵まれているのですが、エジプト人だって車を持っている程度ならいくらでもいるし、みんながみんなそう貧しいわけではありません。車の値段は日本と変わらないか高いくらいのはずで、わたしよりリッチなんじゃないか、と思うくらいです(笑)。
 統計上の数字を見ると、エジプトは悲惨な状況のようですが、政府の調査に対する国民の「率直度」が日本とは桁違いに低いので(笑)、実際のところは数字ほどの差はないのではないでしょうか。

 人は冷たいし、イヤな事件ばかり耳にするし、何かというと自己責任とセキュリティ、そんな国では自殺が多いのも当然です。電車を正確に走らせたり、車をピカピカに磨くより、もっと大切なことが沢山あるでしょう。ちょっとネットが速くて道がキレイなだけで、朝から晩まで機械みたいな暮らしをしているクセに、欧米と肩を並べているかのような安い優越感に浸っているのは哀れです。
 最近ネット上で目にした中で、一番イヤな気分になったのは、排外主義のデモに対して一人で挑んだ左翼活動家が、ボコボコにされた、という件です。
 何という恥知らずな行いか。一応わたしは自称極右ですが、こんなヤツらは右翼の風上にも置けません。
 そんなレベルの排外主義者は、大方外国人が入ってきて仕事を奪われるのが怖いだけの無能人間なのでしょう。そいつらを砂漠にでも捨てた方が、日本の経済のためにもプラスになります。お前ら、天皇陛下のために砂漠に出て行け。お国のために死ね。
 昨日も書きましたが、ヒステリックに排外主義を叫ぶなんてのは、喧嘩のやり方として下の下です。そんなやり方では、倒せる敵も倒せません。ナイフで人を刺す時は、刺す直前までナイフは隠しておくものです。お前ら、全然喧嘩のやり方知らない。めちゃくちゃ弱い。
 そんなチープな排外主義者の考えているより、ある種の国の人たちというのは、ずっと強くて狡賢くて、野獣のように生命力が強いんですよ。カイロの街角でパピルス売ってるオッサンの方が、あんたらよりずっと賢くて強いよ。本当に生き残りたいなら、賢い喧嘩の仕方を学ばないでどうするのよ。たとえ殺したいほど憎くても、あんたら何かには到底倒せないのよ。だから、ギリギリまで近づいて、お互い生かさず殺さずでサバイバルする技術を学ばなきゃダメなのよ。

 日本語が堪能で日本人との付き合いの多いエジプト人が、「日本人は確かに細かいことが得意だけれど、逆に細かいことに拘りすぎて、ちょっとしたことですぐ傷ついたり怒ったりする。そんな調子なら、他所の国になんて来ない方がいいよ」とこぼしていましたが、その気持ちも分かります。彼個人については、個人的事情から嫌いなのですが(笑)、日本人を知れば知るほどウンザリしていったのは想像に難くありません。
 エジプトはとにかく問題だらけの国で、日々の生活でも問題に次ぐ問題、何一つ予定通りに進みません。約束は守らないし、すぐ忘れるし、品のない人はとてつもなく口性ないし、わたしもしょっちゅうキレて怒鳴っています。そんな問題だらけの生活にも関わらず、日に日に日本に帰るのがイヤになっています。人と人がくっついて絶え間なく関係しながら生きているこの感じが、非常に鬱陶しいながらも、リアリティがあるのでしょう。
 不躾でしつこい若者、獣のように厄介なガキどもには手を焼きますが、アイツらと喧嘩できない暮らしなんて、寂しくってたまりません。某所で「子供が石を投げてきて辛い」という記述を目にしましたが、投げられたら投げ返せばいいだけです。というか、こないだも若者に石を投げられて、速攻で石から瓶から十倍くらい投げ返しました。こういう時、ゴミだらけのエジプトの道路は便利です。わたしがいるから石を投げる。投げられるから投げ返す。生きてる。最高じゃないですか。(念のためですが、エジプト人がみんな石を投げてくるわけではありませんw 普通は投げないです)
 ちなみにこういう時は、必ずその場でやり返して叩き潰すべきだと思います。それをやらないから、いつまでもナメられるのです。「明日」になると、この国ではすべてがリセットされています。「警察に言おう」とか、子供が相手の時に「親に言おう」とか考えていたら、その間に忘れているでしょう。犬を躾けるくらいの勢いで、忘れられない思い出をプレゼントしてあげるべきです。

 程度には著しい差があるものの、ほとんどの人が何らかの形で信仰と関わりながら生きているのも、とても安心します。
 「信仰を持っている」というのは、道徳の教科書みたいな生き方をすることではありません。そんな形だけのことなら、平均的日本人の方が余程「いい子」でしょう。
 そうではなく、常に神様を意識し、問いかけ、疑問を持ちながら生きていく、というのが大事なのです。時には立派な行いをし、時にはイケナイこともしてしまうでしょう。でもそういうすべてが、神様の勘定の中に数えられていく。この実感を持ちながら生きるのが信仰だし、関係性そのものが信仰です。信仰は法律じゃないです。箇条書きにされたルールを守ることではありません。
 「日本人は何を信じているんだ?」「信仰がないなんて、食べて寝るだけか?」とか言われる度にムカムカしていたし、「普通の日本人はアンタらなんかより余程倫理的だよ!」と思っていましたが、今では、彼らの言いたいことも何となくわかります。いい加減極まりなく、時にアコギな商売もするエジプト人ですが、とにかく彼らは神様と生きています。絶対自殺なんてしない。常に人と神様と密着しながら生きている。
 日本は本当に、信仰以前のジャーヒリーヤなんじゃないか、と思えてきます。可哀想なわたしの祖国。

 一方で、ちょっとイスラームに興味があってアラビア語を話す日本人と見ると「イスラームについてわからないことがあったら、何でも聞いてよ!」と目をキラキラさせるエジプト人も、ダウア(招待、布教のようなもの)としては非常に下手糞なやり方しかしていません。
 最初の頃は、「そんな教義みたいなことなら、全部本で読んで知っている。そんなことより、普通のムスリムの普通の生活、西洋的世俗的要素といかに共存させるか、みんなバラバラなのに神様が一つな感じ、そこに興味があるんだ」と思っていたのですが、こういう疑問には誰にどう尋ねても全然適当な答えが返ってきません。結局いつも、既に知っている教義的側面に話が戻ってしまいます。
 最近になって、なぜここですれ違いが起こるのか、段々理解できてきました。
 神様が遍在するかのように社会の隅々まで関わっている、この空気が与えてくれる独特の安心感というものが、日本にはまったく存在しないのですが、逆に彼らには当たり前すぎて、説明のしようがないのです。そんなのは当たり前だし(多分意識もできていない)、文言上の教義の方が「高級」な感じがするので、意識的に説明しようとすると、ついその話ばかりになってしまうのでしょう。
 教義的なものなら、日本でもすぐ調べることができます。下手をすると、ちょっと中東に興味のある学生の方が、エジプトのおっちゃんより詳しいかもしれません。そんな上澄みだけ伝えられたら、「一日五回も礼拝するなんてウザくてやってられない」とか、反感を買うだけです。わたしだって、同じように考えるでしょう。
 そして、エジプトに来ても、最初の頃はこの「安心な空気」というのが、感じられないでいました。なんだかいつも騒がしいし、みんな怒鳴ってるし、怖くて心が頑なになっていたのでしょう。
 住んでいるうちに、段々この社会でのうまい距離の取り方というのがわかってきて、心がオープンになり、「ああ、この至るところに神様が届いている感じ、この安心感は何だ!」と感じられるようになってきました。
 この安心感が伝えられれば、日本人のイスラームに対するイメージもグンとよくなるのは間違いないのですが、わたし自身もまだうまく表現できません。古い神社仏閣のない道のまっすぐなニュータウンとか、不気味じゃないですか? わたしは絶対住みたくないです。あれの反対の強力なヤツをイメージすると、すこし似ています。

 大分書き散らかしました。すいません。

 夜中に大家さん親子がやってくる。基本、深夜一時くらいまでは「訪問可」な括りのようです。
 そして遂に、洗濯機が到着!!
 カイロ生活ももうすぐ三ヶ月になりますが、とうとう電気洗濯機を手に入れました! ほら御覧なさい! アッラーはいつも見ているのです!! 東芝製全自動洗濯機! ジャパニーズクオリティ!
 大家さんのファトマは、外国人向けアラビア語教師の職に興味があるらしく、しきりに学校のプログラムなどを尋ねてきます。彼女のフスハーははっきり言ってボロボロで、到底教師の務まるレベルではありません。アーンミーヤを色々教えようとするのですが、いつも的外れです。適当にسياسي政治的な台詞でお茶を濁します(笑)。
 でも、大家さんとして、友人として、とても良い人なので、一緒にお風呂の掃除したりしながらお話するのは楽しいです。
 すぐに変なフスハーで喋ろうとして、それがかえって難しいので「アーンミーヤで喋って」と言うのですが、「アーンミーヤだとわからないんじゃないかと心配なの」と言います。でも、彼女の場合、アーンミーヤで話している時が一番わかりやすいです。
 会話の中で、わたしがガス管(パイプ)を指す言葉としてأنبوبةと言ったのですが、彼女は「違う」と言います。「ここの水やガスは、会社から直接来ている。أنبوبةというのは、専門の人が運んでくるものだ」とのこと。どうやら、アーンミーヤではأنبوبةは所謂プロパンガスのようなものを指しているようです。
 でも、ファトマは勘違いの多い人なので、アーンミーヤでもなく「ファトマ語」かもしれません(笑)。

ハンズフリー日傘
ハンズフリー日傘 posted by (C)ほじょこ
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  1. 音楽はハラームか、信仰の空気、洗濯機到着|2009/10/10(土) 18:24:50|
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