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ルクソール方言、王家の谷・王妃の谷の撮影禁止

11/28

 ルクソールのファーストインプレッションを書き忘れていました。
 事前に聞いていた話では、ルクソールは「油断のならない土地」で、アスワーンは純朴そう、という物凄い大雑把なイメージを抱いていました。
 実際に来てみると、ルクソールはイメージより遥かに綺麗な街。もっとゴチャゴチャしたところを想像していたのですが、道も広くて整備されているし、カイロなんかよりずっとオシャレに見えます。
 でも、これは観光をバネに、最近になって作られた町だからでしょう。特に東岸は、街の多くの部分がまだ「新品」です。
 カイロでは地図が実に頼りにならないのですが、ルクソールやアスワーンは、地図で距離が読めます。
 カイロで地図が使えない、というのは、直線距離だと近くても、道路横断が困難だったり、ある地帯がスラムで突っ切るのが大変だったり、変な立体交差を遠回りしないとかわせなかったり、とにかく思ったように進めないからです。ルクソールやアスワーンは、道は綺麗だし、西岸はどっちものどかな田舎なので、地図で見たままの距離感覚で行動できます。

 人々が「油断ならない」というのも、カイロに比べて特に酷いとは思いません。むしろ引き際はカイロよりマシなのではないかと思います。一般市民も、市街地と観光地付近なら外人慣れしています。
 ただ、基本的に田舎なのは確かなようで、子供のまとわりつき具合は、カイロ以上かもしれません。
 また、訪れる人たちはほとんど純粋な観光客なので、こっちがアラビア語を話したりアラビア語の新聞を読んでいると、驚かれることがあります。
 いい加減慣れましたが、個人的には、ここにいる外国人たちが、ちっともアラビア語を喋らないのが不思議で仕方ないのですが・・・。

 アラビア語と言えば、この日の朝にホテルOASISの人と話していて、方言の違いに気づきました。
 アッパーエジプトの方言については、以前からいくらか聞いていたのですが、まず、ルクソールではカイロ方言を話す人の方が多数派です。本当は混ざっているのかもしれませんが、普通に聞いているとわたしごときには識別できません。
 時々ルクソール方言(アスワーン方言? アスワーンではこの方言の人の率がやや増えている)を話す人がいますが、すぐ気付く特徴は以下の通り。

① قをءとして発音するカイロ方言と異なり、フスハー同様にقで発音するか、g音のような音で発音する
② 「g音のような音」は、英語のgやカイロ方言におけるجとまったく同一ではなく、少しこもったように聞こえる。كからقに向かうベクトルで、gを奥の方で発声しようとした時のような音?
③ جをフスハー同様にjで発音する

 ただし、これらの発音パターンは、カイロ方言同様、一律に別の音へシフトしているわけではなく、単語単位で決まっているようです。
 アスワーンでの体験ですが、「(あの建物は外は汚いけれど)中は綺麗جوة جميل」と言うのに、「ジョーワ・ガミール」と言っていました。ジョーワはjですが、ガミールはgです。
 語順や基本的な文法はカイロ方言と同様に聞こえましたが、フスハーにはない頻出語彙も、発音が違います。「今」を示すカイロ方言の「ディルワゥティー」が「ディルワクティー」と、قがフスハー読みされています。

 耳のヘッポコなわたしがちょっと滞在して気付いたことなので、間違っていることもあるかもしれませんし、個人単位でも混ざっているのかもしれません。日本人だって関西弁と標準語が混ざることはありますし。
 全般的に、フスハーから入った一般日本人学習者にとっては、カイロ方言より聞き取り易いです。
 カイロ方言は、とにかくقがءになるのが辛いのですが、音がフスハーに近く統語構造が簡略化されているアッパーエジプトは、外人に優しいです。

 さて、この日のルクソール観光。
 遺跡に興味がないので迷ったのですが、せっかくなので、宿から出る西岸ツアーに参加することにしました。王家の谷、ハトシェプスト女王葬祭殿、王妃の谷、メムノンの巨像を回るものです。
 入場料等すべて込みで、一般210ポンド、学生140ポンド。
 変な図書館のstudent cardしかないけれど「何とか学生で行けないか」と相談すると、「160ポンドで頑張ってみる、ダメだったら差額を後で払ってくれ」という、よくわからないオチに。
 結論から言うと、見事160ポンドで回れたので、20ポンドは「カードが怪しいのをカバーしてもらった代」だと思っておきます。なんというファジーな世界!

 実はワタクシ、ツアーなるものに参加したのは生まれて初めてです。
 超協調性がなく、何でも一人でやる性格なので、そんなまどろっこしいもんやってられるか!と避け続けていたのです。
 でも、各ポイントがそこそこ離れていて、交通が不便で入場料も高いルクソール西岸、160ポンドで全部回れるなら得かな、という印象でした。個人で車や馬車を借りるとまた交渉が面倒な上、高くつくし、自転車でこれだけのポイントを回るのは、体力のある人でないと無理です。この時期だから、まだ頑張れば自転車でも行けるかな?という感じでしたが、夏だったら軽く三回は死ねます。
 お客さんは、アメリカ人、スリランカ人、韓国人、日本人などの混成で、ガイドは英語でした。

 王家の谷について、墳墓の中だけでなく谷全体が撮影禁止になった、というニュースを前にお伝えしていたのですが、本当に「バスの中にカメラを置いていけ」と言われました。王家の谷だけでなく、王妃の谷も、谷全体が撮影禁止でした。王妃の谷なんて、外側は単なる荒野で、禁止する値打ちもないと思うのですが・・・。
 名目としては「墳墓の保護」ということでしょうし、マナーが悪い観光客がこっそりカメラを持ち込むことに対しての制裁措置なのでしょう。実際、王家の谷で、頭の悪そうなアメリカ人がカメラを持ち込んで、エジプト人のおっちゃんに吊るし上げられていました。
 ただ、そうした正論だけで、多くの観光客と観光業者の反感を買ってまで撮影禁止を踏み切ったとは、ちょっと思えません。どこかから政府に圧力がかかったのではないか、と思うのですが、谷全体撮影禁止で一体誰が得するのか、その得する人が政府を動かせるほどパワーがあるのか、さっぱりわかりません。

ハトシェプスト女王葬祭殿
ハトシェプスト女王葬祭殿 posted by (C)ほじょこ

ハトシェプスト内側レリーフ
ハトシェプスト内側レリーフ posted by (C)ほじょこ

メムノンの巨像
メムノンの巨像 posted by (C)ほじょこ

 というわけで、王家の谷、ハトシェプスト女王葬祭殿、王妃の谷、メムノンの巨像を回ってきたのですが、撮影禁止だった王家の谷、王妃の谷については、本当に重ね重ね申し訳ないのですが、わたしはあんまりでした。
 いや、値打ちがあるんだろうな、というのはわかるんですよ。あのレリーフに色が残っているだけでも「おお!」と思います。
 でもですね、墓なわけですよ。暗くて辛気臭いところに、潜っていくわけですよ。それが個人的には、どうにも息が詰まって好きになれない。これまた超極私的に、ああいうフィルアウニーな図像的思想、墓という具象を作ってしまう考え方に、倫理的な反感を覚える、というのもあります。
 その点、ハトシェプスト女王葬祭殿は、カンカン照りの太陽の元に壮大な建築物があって、俄然爽快です。
 見晴らしの良い高台にあるので、ここから振り返ってみるルクソールの風景も素晴らしいです。ハトシェプスト女王葬祭殿のある辺りは、もうすっかり砂漠なのですが、後ろを振り返ると、本当にこの国はナイルの横の狭いところにだけ緑があって人が住んでいるのだなぁ、と実感します。

 でも本当は、タダで見られてナイルにも近いメムノンの巨像が一番良かったです。
 適当に紐で囲ってあるだけで、道端にポツンと巨像が置いてあるところがイイ。地方の国道沿いのファミレスが、宣伝用にでっかいタヌキでも置いているくらい、さりげないです。
 「あれ、コレ遺跡やったん?」というくらい普通に道端に巨大な像があって、しかも思い切り小鳥の巣になっている辺りが、ちょっとラピュタっぽいです。
 ちなみに、メムノンの巨像の脇の畑で、オッサンと可愛い女の子が羊に草をやっています。この女の子が妙に可愛いし、わざわざ広い畑の隅っこで餌をやっているので怪しいと思ったのですが、この子の写真を撮った観光客にバクシーシを要求していました。
 こういう逞しい商魂とグチャグチャに混ざっている辺りも好きです。
 メムノンの巨像だけなら、自転車で行けると思います。

 ちなみに、ガイドさんの話では、現在閉鎖されている墳墓の一つ(ネフェルトアリの墓だったかな?)が、10分3000ドル(!)で特別に撮影許可されるそうですが、毎週のように日本人がやって来るそうです。
 古代マニアの底力は計り知れません。というか、日本人って一体・・・。

 朝7:00に出発したルクソール西岸ツアーはで昼過ぎに終了。
 その後、OASIS屋上でコシャリ(4ポンド)を食べてボンヤリした後、せわしないことにアスワーンに移動しました。「アスワーン行きなら、乗ってから切符が買える」とのことで、行き当たりばったりで電車に乗りました。
 17:30発との情報を得ていたのですが、駅に行ったら「18:00だ」と言われ、実際に来たのは18:30頃でした。全然合格点です。所要時間は約3時間。
 新聞を読んでいたら、隣に座ったタイーブという男性に話しかけられ、お喋りできたのは良かったのですが、「アスワーンのどこでも連れて行ってやる」「電話番号教えろ」「明日必ず会おう」と、例によってナンパ+溢れ出る親切の猛襲を受け、かわすのに苦労しました。
 車内で買った切符は31ポンド。隣のエジプト人女性は27ポンドだったので、差額4ポンドは謎です。
 でも、こういう謎はエジプトでは尽きることがないので、深く考えてはいけません。
 そういえば、アメリカ人が宿の人に切符の相談をして「fair priceで買えればそれでいいんだけど」と尋ねたら「彼らにfair priceというものはない」と言われていました・・・。
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  1. ルクソール方言、王家の谷・王妃の谷の撮影禁止|2009/12/03(木) 01:04:51|
  2. ルクソール・アスワーンの旅

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