旅から帰り、また単調な生活に戻っています。
水曜日に夜行列車でルクソールから帰って、少し休んで授業に行ったものの、この日はかなりグッタリ。
その晩爆睡したものの、翌木曜日になっても疲れとロバから落ちたダメージが抜け切らず、授業後図書館に行っても今ひとつ集中できません。
早めに帰ったら、夕方からの日本語クラスに出るNちゃんと、近所の駅前でバッタリ会いました(家がご近所さん)。Nちゃんは、長身スレンダーな美人さんだけれど、おっとりした性格で、他の友達といると常に背景にフェイドアウトしてしまうタイプ。そういう地味なところに勝手に好感を持っています。「びっくり!」と日本語で言われて、二度びっくり(笑)。
彼女はどうも日本のアニメが好きなようなのですが、わたしの方が詳しくなくて着いていけません。日本のアニメファンの男の子は、エジプトに来ればこんな可愛い子にモテモテかもしれませんよ!
早めに帰って寝て、また爆睡したところ、いつもは起きないファジュルのアザーンで目を覚ましました。もちろん二度寝(すいません)。
この金曜日の休日は、近所に買い物を行った以外、ほとんど一日中部屋で勉強したり翻訳したりゴロゴロしたりして過ごす。
旅から帰った直後には動いていたネットが、丸三日くらい落ちていて、旅行記の続きがアップできないし、せっかく部屋にいるのに遊べないし(それが良かったかもしれませんが・・)、少しイライラしました。こういう時のために、読み応えのあるwebページやpdfをいくつかダウンロードしてあります。
土曜日から再起動。いい加減体力も完全回復しました(ネットは夕方まで回復せず)。
時間を増やした授業も順調にこなす。
普段の土曜日は閉まっている某日本関係施設の図書館が、日本語検定直前ということで開いていたので、便乗して行ってみると、NちゃんとSちゃんにまたバッタリ。
一緒の机で勉強していたSさんとも友達になり、勉強している脇から次から次に日本語のことを質問され、図書館で喋るわけにもいかず、外に出て臨時教師になります。
でも、説明しているうちにこっちもアラビア語の勉強になり、お互い益がありました。「○○のくせに」という表現を説明するのに難儀しました。「○○にも関わらず」ということなのですが、それだけでなく、非難するような調子が込められている、ということを伝えないといけません。
日本語検定二級のテキストを見せてもらいましたが、書き言葉でしか使わない洒落た表現も沢山入っていて、かなりレベルが高いです。その割に普通の会話がまだまだスムーズではないですが、丁度日本人が凝った英語表現を知っている割に会話がたどたどしいのと一緒なのでしょう。
メトロで一緒に帰宅。
車内でルクソールで撮った写真を見せている時、子供のロバをجحشというと教えてもらう。カイロ方言の発音だと「ガヘシュ」くらいの感じ。ガヘシュ超かわいい!
Nちゃんと家のそばまで歩いている時、車に乗った若者連中がこっちをジロジロみて、例によってはやし立ててきます。
ムカついて車をガンガン蹴飛ばし「降りろ! 殺す!」とか怒鳴ってしまってから、Nちゃんが一緒なのを思い出して「やり過ぎた」と思ったのですが、大人しいNちゃんも味方してくれて怒ってくれ、最終的には運転手の男が謝りました。
Nちゃんが「ごめん」と謝りますが、もちろん彼女には1ミリも罪はないし、「全然平気! いつもだから!」と笑います。物静かなNちゃんですが、「ああいう時は怒った方がいい、あれくらい言って当然」と、流石エジプト女!というところを見せてくれます。
こういうことがある度に(毎日だけど)、つくづくエジプトがイヤになりますが、同時に彼女のようなエジプト人や、数は少ないですが男でもマトモなのをいることを思い出して、エジプト人が嫌いにならないように努めています。ああいうアホな若者は世界中どこでもいるし、滅多に暴力行為等に発展しないだけ、エジプト(イスラーム圏全般)はかなりマシな方だと思いますが・・・(それを考えると、日本の若者のお上品度はすごい)。いやほんと、女友達がいなかったら、エジプト全否定しているところです。
次にエジプトに来る時は、催涙ガス辺りの中間距離で使える武器を持ってきます。殺傷能力が高すぎてもマズいし、手元の愛用武器は射程が短いのであんまり役に立ちません。爆竹とか殺虫スプレーとかも良いと思います。うっかり大怪我させても、走って逃げたらこの国なら逃げ切れる気がします(非推奨)。
学校や図書館といった閉鎖空間は平和なのですが、とにかく通りを歩くのが一苦労です。息を止めて「ハッ!」と突っ切るような気合が要ります。
部屋の中ではにこやかだった女の子が、外に出た途端「防御モード」に切り替わるので、別に外人だけの問題ではないようです。
「何事も起きない」って最高です。
ちなみに、一緒に歩いている時、後ろから来たトゥクトゥクに軽く接触されました。カイロの道で他人と喋りながら歩くと、注意が散漫になり結構危険です。横に並んで歩くだけで危ないのですが、「騒音の中で外国語で話す」のにかなり集中力を取られてしまっているので、お喋りも命がけです。
この日一緒だったSさんも「こないだ事故に遭った」と言っていたし、ほぼ毎日事故現場に出くわします。
「突き飛ばす」くらいのダメージで済んだ場合は、車の側には「事故った」という意識すらありません。しかも大きく避けると面白がってわざと突っ込んでくるので、チキンレースだと思ってこっちから突っ込むくらいが安全だったりします。
カイロの交通は本当に頭がおかしいです。
念のためですが、カイロの交通を憂えているのはエジプト人も一緒で、彼らがこのままで良いと思っているわけではありません。
公共交通網を整備し、車検や関税などのプレッシャーで自家用車数を制限すべきだと思いますが(カイロを走っている車の99%は日本の車検を通らないはずw)、それ以前に交通放棄を厳格化し適用するだけで、かなりの改善が見込めるはずです。
この話題は、エジプト人との間で話し飽きました・・・。
日曜日の授業で、古典テクストの抜粋を読んでいたのですが、短い文章なのに物凄い難しくて、七転八倒する。
休憩の時にF女史に「これはエジプト人にとっても難しいよね?」と救いを求めると、「うん、難しい。古いフスハーは本当に難しいよ。全然違うよ」と言ってくれる。
彼女は、福音書のアラビア語訳を貰ったことがあるそうですが、難しくて全然分からず、英訳を買ったそうです。「英語の方がずっと簡単だよ」と言うエジプト人。
「昔の人は本当にこんな言葉で喋ってたのかな? 絶対違うと思うよ。一般大衆は、アーンミーヤみたいの使ってたに決まってる!」と言うと、ちゃんと笑ってくれました。ギリギリな話題かな?と思ったら、別に普通にネタとして通りました。
ちなみに、福音書アラビア語版はわたしもちらっとだけ読んだことがあるのですが、エジプト人も投げ出したと聞いてちょっと安心しました(笑)。でもメチャクチャかっこいいですよ。
月曜日の授業で、少し蝿のことを話す。
エジプトの蝿の多さを恐れて蝿取り紙を持参したものの(エジプトでも買えます)、幸い我が家にはほとんど蝿が出ず、かつ自分の方がすっかり蝿に適応してしまって、何も感じなくなった、という話。
F女史によると「アメリカ人は蝿に敏感」。本当かどうかわかりませんが、アメリカも蝿が少なくて慣れていないのかもしれませんね。
鬱陶しいけど、別に実害もないので、慣れたら放置モードです。
図書館のお手洗いに行ったら、何人かの女性が窓の外を見て騒いでいるので、何かと思ったら天気雨でした。
雨自体あまり降らないので、天気雨が珍しいようです。
一人の女の子が「写真撮りたい(サウワル)」と言ったら、横で興味なさそうに煙草を吸っていたオバチャンが「石鹸(サーブーン)欲しい?」と聞き違えて「石鹸ちゃうよ!」とツッコまれていて面白かったです。関西人なら「サしか合ってないやんけ!」と畳み掛けるところです。
雨と言えば、一ヶ月くらい前からテレビが映りません。
アンテナの向きがズレたんじゃないか、と思っていたのですが、ルクソールOASISでYさんと話していて、「雨のせいだ!」と気付きました。
この国では、雨が降ると一斉に色々なものが壊れます。あらゆるものが晴天以外想定しないで出来ているので、電気配線系などは見事にイカレます。アスファルトの上の砂が濡れて滑りやすくなり、さらに皆ツルツルのタイヤで走っているので、いつもより更に交通事故が頻発します。
東京で大雪が降った時みたいです。
火曜日、カイロでイスラーム法を学ぶインドネシア人のOちゃんとチャットになる。
某SNSの普及率があまりに高くて、気が進まないまま入ったら、チャットの機能なんかもあって、面白いやら煩わしいやら(笑)。
共通言語は英語とアラビア語で、彼女はちょっとだけ日本語もできるのですが、ミックスで始まって結局英語に落ちちゃいますね(笑)。タイピングが楽だし。
エジプト人は「チャットアラビック」というラテン文字表記の簡易アラビア語のようなものを操るのですが、わたしはなかなかついていけません。ラテン文字で書かれると、パッと見た時の直観的理解が阻まれるように感じるのですが、それはわたしがまだまだ書記に頼っているからかもしれません。日本人的。
彼女は家族でカイロに住んでいて、イスラーム法を学んでいるのもお父様のご意向とのこと。「最近ペルシャ猫飼ってる」とか言うので、インドネシアの富豪お嬢様かもしれません。
ちなみに「欲しかったら一匹あげる」と言うのを、「猫はアパートに沢山いるよ、wildなやつが!」とお断りしました(笑)。
ルクソール 過積載ぎみのロバ posted by
(C)ほじょこ
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テーマ:エジプト - ジャンル:海外情報
- 埃っぽく怒りっぽい一週間|2009/12/09(水) 05:22:07|
- エジプト留学日記
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F女史から動物に関して面白い話を聞く。
「朝、雄鶏が鳴くのは天使が見えるから」「ロバがいななくのは悪魔を見ているから」という二つ。どちらもイスラームに由来するお話です。
一番鳥に天使が見える、というのは、ファジュルのアザーンとクロスオーバーするし、割と素直にわかります。
ロバのいななきというのは、わたしもカイロに来て初めて聞いたのですが、「イーヒイーヒ」みたいなヘンテコな声で、夜中に時々耳にします。アラブ的にはあれは「醜い声」らしく、悪魔を連想するようです。ロバ、いつも踏んだり蹴ったりです。
ちなみに、この話をしている時、F女史が素晴らしい動物の鳴きまねをしてくれました。彼女は今までにも何度か動物声帯模写をしてくれて、「エジプト人は音声センスが凄すぎる!」と思っていたのですが、これは別にエジプト人の性質ではなく、彼女個人の特技なのだとわかってきました(笑)。本当にめちゃくちゃ上手です。
某日本関係施設で自習していたら、前にお話した日本語を学ぶNさんとSさんと再会。特にNさんは家もご近所で、物静かでお気に入りです。どうでもいいですが、背がわたしと同じくらいなのも楽チンです。
Sさんはかなりアグレッシブなエジプト女子で、施設に勤める男性と激しく政治談議を交わしたりしていました。わたしが勉強している横から、ちょこちょこ日本語について質問してきて、ちょっとおかしいです。
彼女たちには、「これ日本語でどう言うの?」という質問をよくされるのですが、アラビア語では非常に日常的な表現でも、日本語ではズバリ言えないものがよくあって、いちいち唸らされます。
ما فيس فائدة
は「無駄」「仕方がない」と教わったらしいですが、彼女は「日本語をたくさん勉強しても、次の日には忘れてしまい、マーフィーシュファーイダ」と言いたいようで、そこで「無駄です」とか「仕方ないです」と言っては、あまりにも絶望的な台詞になってしまいます。確かに「無駄」に相当する表現なのですが、日本語ではそこで「無駄」とは言いません。「なかなか上達しません」とか、全然別の表現が来るのが自然な発言です。
また「仕方がない」というのは、「他に方法がない」ということで、良い意味でも悪い意味でも使います。良い意味というのは、「結果は残念だったけれど、一生懸命やってくれたんだから、仕方ないよね」みたいな文脈の話で、これを伝えるのは非常に難しかったです。غير حاجة تانيةとかما فيس سبيلとか言うのでしょうか。フスハーならلا محالةとかもアリかと思います。それ以前に、これまたアラビア語ならまったく別の表現が来る方が自然な慰めになるはずです。
帰りも家のすぐそばまで三人一緒で、子供の頃に戻ったみたいでした。
Sさんがذبحという語の訳にこだわっていました。
「動物を屠殺する」という意味なのですが、「日本語では人間と同じ『殺す』か『屠殺する』だ」と言っても、「日本では電気で羊を殺すんでしょう? そうじゃないの、喉をナイフでかき切るの、それが重要なの!」と引きません。特に犠牲の動物を殺すというのは、宗教的な行為であって、単に機械的に家畜を殺して食べるのとは違うのだ、と言いたいのでしょうが、日本語では「それ用の単語」というのはありません。
こういう「自分や自分の文化にとってすごく大切なもの、重要な違い」を伝えたいのに、外国語にしてしまうとやたら冗長になるばかりでサッパリうまく言えない、という気持ちは、よく理解できます。
でもね、それは諦めるしかない(笑)。とりあえず大雑把なことを言って、後から時間をかけてジワジワ説明するしかないですよ。
彼女たちと話していて、居合わせたインドネシア人の女の子Oさんと友達になりました。
ヒジャーブをしていますが、顔つきが東アジア系だし、日本関係の施設だったので、最初は「エジプト人と結婚した日本人かな?」と思ったのですが、それにしては発音がうますぎるし、訛りが日本的ではありません。
カイロに一家で数年住んでいて、アズハール大学の学生とのこと。アーンミーヤは、わたしから見たら完璧です。言葉遣いも丁寧で、とても好印象でした。
インドネシアは世界最大のムスリム人口を抱える国で、ムスリムなら子供の頃から意味は分からなくてもクルアーンを勉強しますから、彼らの発音は素晴らしいです。
英語は今ひとつたどたどしく、最近日本語の勉強を始めたとのこと。フスハーについては「カイロに来る前から勉強しているけれど、本当に難しくて大変」と言っていました。まったく同感です(笑)。
アラビア語を学ぶアジア人同士ということで、日ごろの思いを色々共有できました。「アラビア語は世界一難しい!」とか「ぶっちゃけ、エジプト料理は不味い」とか(笑)。ちなみにわたしはインドネシアやタイ、マレーシアの料理は大好きで、「食べ物はインドネシアが断然良い」という彼女を断固支持したいです。
顔つきはエジプト人よりは日本人に近いですが、ノリ的にはエジプト人に近い気がします。彼女個人の性格かもしれませんが、ちっちゃいのに元気一杯で、ちょっと動きが雑だけれど、じっと相手の目を見て熱く語るところが、エジプト女子と少し似ています。でもエジプト人より愛嬌があるかな(笑)。
日本や韓国のこともエジプト人と違い良く知っていて、俄然インドネシアに親近感が沸いてきました。
インドネシアで思い出しましたが、以前工場で働いていた友人が、インドネシア人の労働者と知り合いになり、彼らの一人が「英語はわからないけれど、アラビア語はわかる」と言っていたそうです。
また、以前にネット上で、インドネシア人とアラビア語でやり取りしたことがあります。多分彼女は英語もわかるのですが、アラビア語を共通言語として使う、というのは、とても楽しい経験です。
そう言えば、今日は同じ学校に通うイギリス人の女性とも、ずっとアラビア語で話していました。英語という最強言語が母語でありながら、気合でアラビア語で通す姿はカッコイイです。彼女はペルシャ語を学んだ経験もあるとのこと。素晴らしい。
どんな言語でもそうですが、外国人同士が第三言語として使って話すのは、ネイティヴの話を耳ダンボで盗み聞きするより遥かに簡単です。ネイティヴでも、「外人向け」に喋ってくれている時はまだ楽なのですが、エジプト人同士の会話を盗み聞きするのは非常に大変です。
全然関係ありませんが、最近
現代アラビア語小辞典を借りて使っていることが時々あり、これが結構使えます。
アラビア語日本語辞書なら、まず
パスポート初級アラビア語辞典という例文も豊富で素晴らしい辞書がありますが、あくまで初級用で、これだけでは新聞も読めません(解説は本当に素晴らしく、単語集としてはずっと使えるし、わたしも寝る前に毎日読んでいます)。
また、Pdicで使う辞書データが公開されていて、大変お世話になっていますが、マシンが手元にないと当然使えません。
Hans Wehrは語彙数的に申し分なく、全アラビア語学習者が使っていると思いますが、単に訳語が羅列してあるだけで、また日本人にとっては英語も所詮外国語です。わからないアラビア語の単語を調べたら、わからない英単語が出てきて、わからない単語を二つノートに書く、というシュールなオチになることもあります(笑)。
現代アラビア語小辞典は、語彙数ではHans Wehrに到底及びませんが、実用に供する収録数で、かつ日本語です。以前に書店で見た時は「表紙が固くて使いにくそう」とかいうどうでもいい理由でパスしてしまったのですが、異国の地で有り難味を噛み締めています。
とりあえず現代アラビア語小辞典で調べて、見つからなかったらHans Wehr、みたいなパターンが最近多いです。
夜の肉屋さん posted by
(C)ほじょこ
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- 雄鶏には天使が見え、ロバには悪魔が見える|2009/11/25(水) 08:01:12|
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